連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㊷―「研修をムダにしないためには 」

Posted on 2020-04-14

旬刊旅行新聞4月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊷です。

「研修をムダにしないためには」

 スタッフに接客研修をしても「なかなか実務に結びつかない」とか、「研修直後は接客が良くなるが、定着せずに時間の経過とともに研修前のスタイルに戻ってしまう」という悩みをお持ちの方も少なくないと思います。

 研修内容を実際の接客の現場に定着させるには、スタッフ自身が欠点を自覚し、改善策を提示してもらうことが重要です。そのためには、グループワークを上手く活用していくことをお勧めします。
 
 先日行った研修先の旅館のグループワークでは、次のテーマで議論を行ってもらうことにしました。
 
 1つは「どうしたら顧客の目的を知り、お役に立ち、期待値を上回れるか」。2つ目は 「どうしたら感動サービスができるか。記憶に残してもらえるか」など、いずれも旅館に泊まるお客様を意識したテーマです。
 
 まずは、各グループがそれぞれのテーマでの現状の課題を認識し、次に実行への取り組みを考え、最後に発表していきます。
 
 テーマごとに各グループが発表したあとには、発表を聞いた一人ひとりが発表に対して、意見を言ったり、質問をしたりする時間を設けました。すると、議論が活性化し実現に向けての筋道が見えるようになり、充実したグループワークを行うことができます。
 
 テーマごとに、毎回グループメンバーを入れ替えれば、同じような思考パターンに陥ることを防げます。
 
 このようなグループディスカッションでは、テーマだけを漠然と与えてもスタッフには取り組みづらいため、私の方で考え方のヒントや課題、事例を挙げて方向性を示し議論を進めてもらいました。それぞれ同じようなテーマでしたが、いずれも奥深い議論を行うことができました。
 
 おもに中堅クラスのスタッフが参加していたため、すぐに取り入れられるナイスアイデアの数々に関しては、さっそく取り組もう、と行動に移す姿勢が見られました。その一方で、当たり前のことができていないという現状の課題も浮き彫りになりました。
 
 例えば、テーマ2で提案された取り組みの1つは「お客様に話し掛ける」という基本的なことでした。結局実際の接客現場ではこの基本ができていなかったのです。「来館前にどこに行ったのか、〇〇県は初めてか、来館後はどこに行くのか」といった些細な会話すらできていない事実に気づかされます。
 
 そこで、お客様との会話のトークスクリプトを作るとか、顧客カードを作成するといった具体的なツールを作成すると意気込んでいました。
 
 文章にすると当たり前で、初歩的なことと思われるかもしれませんが、この基本的なことが徹底できていないことが多いのです。
 
 研修内容の徹底が思うように行かないと悩まれる際は、研修と併せてグループディスカッションも行ってみてはいかがでしょうか。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」



『おもてなし接客術』㊶―「クラブメッドに学ぶおもてなし」

Posted on 2020-02-15

旬刊旅行新聞2月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊶です。

「クラブメッドに学ぶおもてなし」

 先日、タイ(プーケット)のクラブメッドに滞在しました。クラブメッドは、近年、新興の宿泊施設で取り入れられることも多くなってきた「オールインクルーシブ」発祥の企業です。

 クラブメッドに滞在していると、どうしても日本旅館と比較してしまいますが、その違いはマトリクスで言うと対極の位置にあります。

 たとえば、利用者の滞在日数は旅館が主に1泊2食型なのに対し、クラブメッドは長期滞在型です。

 食事スタイルは、旅館では時間や内容が定められているのに対し、クラブメッドでは、時間も内容も自由です。

 アクティビティは、外に出掛けて楽しむ旅館に対し、クラブメッドでは敷地内で楽しむといった具合です。

 このように、旅館と対極のクラブメッドではありますが、そこから学べるおもてなしもあります。 

 具体的には、わかりやすい形で、こちらの情報を事前に頭に入れて、さまざまな対応を取ってくれます。滞在中のようすを気にかけてくれるという点でも、感心することがとても多かったです。

 たとえば、到着時に子供の名前をすぐに呼んでくださったのには驚きました。

 海外旅行ということで、家族全員の名前を事前にホテル側に知らせていたこともありますが、会ってすぐに名前を呼ばれたことで、子供たちも嬉しく安心したことと思います。

 また、食事中に「何か気になることが無いですか」と、こちらの反応を気にかけてくれ、食事を残したときには「口に合わなかったですか」とわざわざ聞いてくれました。

 また、食事中に私たちの席が空いていれば、スタッフが「座っても良いですか」と聞いて来て、スタッフと宿泊客が一緒に食事を楽しむスタイルを採用しています。

 その間に、コミュニケーションを取りながら滞在中の困り事を解消し、アクティビティやショー、イベントなどその後の過ごし方を提案してくれるというように、顧客満足度を上げています。

 このような対応は、明らかにこちらのことを“気にかけてくれている”ということが伝わります。

 日本では、お客様に直接聞くことをせずにようすを伺いながらスタッフ側で推測・判断することが多く、この「察する」とか「言わずもがな」という対応が、日本の接客のレベルの高さにもつながっています。

 ただその一方で、クラブメッドのようなあからさまでわかりやすい接客スタイルも、とくに外国人観光客や子連れのお客様の場合などは、時と場合によっては、効果的であると気づかされます。

 日本のやり方に固執するのではなく、海外リゾートで学んだ接客・おもてなしも、旅館をはじめとした接客の現場で効果的に取り入れたいと考えております。

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『おもてなし接客術』㊵―「おもてなし上級者のいるUSJ」

Posted on 2019-12-20

旬刊旅行新聞12月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊵です。

「おもてなし上級者のいるUSJ」

 開業18年目にして初めて、USJを訪れました。開業当初はトラブル続きで、ディズニーの2番煎じとも言われていましたが、いまやTDLを凌ぐ勢いのある人気テーマパークとなっています。

 USJ滞在中は、ついTDRと比較をしてしまいますが、その印象はUSJの方が、お客様を楽しませようとする気持ちが強い(強く伝わってくる)というものでした。

 TDRがゲストをゲスト扱いする招待型とするならば、USJはゲストも一緒に作り上げる参加型を意識しているようです。

 同じテーマパークでも、コンセプトがまったく異なるということはスタッフの対応を見ても明らかでした。

 私の経験からすると、会話のきっかけがゲスト発のTDRと、スタッフ発のUSJという違いが見えてきました。

 TDRのスタッフ「キャスト」は、以前から接客本のテーマとして取り上げられるなど話題性も高く、優秀とされています。

 一方で、USJのスタッフ「クルー」は、ようやく最近、テレビでその教育ぶりが取り上げられるようになってきたぐらいです。

 そのため、スタッフの対応などはTDRに比べて劣るのだろう、と勝手な思い込みをしていたのですが、良い意味で期待を裏切られました。

 最も感心したのは、ファストフードスタイルのレストランスタッフが、話術巧みに待ち時間を感じさせない工夫をしていたことでした。テーマパークと言えば「待ち時間」がつきもの。USJでもアトラクションはもちろん、食事をとるのも列に並んで待つのが当然でした。

 私もその行列に並び、ようやく自分の順番になり食事を注文すると、レストランの女性スタッフは、会計中にこちらから聞きもしないのに、間もなく始まる園内イベントのことを話し始めました。

 しかも、後ろに誰も並んでいないのならまだしも、ずらっと行列が続いているのも構わず、呑気に話をしてくるのです。

 私には価値のある話で助かりましたが、後ろに並ぶ人のことを考えると気が引ける思いがしました。そして話が一段落する頃に、丁度商品が提供され「いってらっしゃい」と送り出されたのです。

 絶妙のタイミングとはこのことです。これは、次の順番の人にも同じような対応をしていたのは言うまでもありません。

 ふつうゲストはレジに並ぶのに待たされ、注文が終わると再度商品口で待たされるという流れとなり、2回は待たされることになるわけです。ところが、ゲストと会話をして場をつなげば、レジ待ちの1回待てば良く、「待たされた」というマイナスの経験を1回に軽減できるというメリットがあります。

 1―2分の短時間で、このようなテクニックを駆使できるスタッフは、おもてなし上級者と言えます。

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『おもてなし接客術』㊴―「お客様に不満の種を作らせない」

Posted on 2019-10-20

旬刊旅行新聞10月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊴です。

「お客様に不満の種を作らせない」

お付き合い先の旅館に投稿されたクチコミの一部です。

 「どこの宿でもやっていることですが、車に乗って出発するまで、お見送りで待っていただくのも困りものです。発車前に荷物を整理したり、次の目的地までのナビをセットしたりと色々とやることはあるのですが、早く移動しないといけないような雰囲気なので、とりあえず出発してから、路肩に車を止めて色々と作業することになります」。

 旅館は「お客様のお見送りをしたい」という“気遣い”でしょうが、お客様はスタッフに“気を遣って”早く出発されたようです。

 双方が“気を遣った”結果が、お客様のマイナス評価を生むという残念な結果となってしまいました。

 何か不満に思うことがあれば、その場でスタッフに知らせてもらえれば、いくらでもその不満を解消する術があると旅館側は思うでしょう。お客様が「お見送りはもう結構です」と一声掛ければ、お互い気持ちの良いものになったはずです。

 しかし、これが「お客様」です。その場ですぐに不満を伝える方は、少数派かも知れません。そこで、お客様に少しでも不満の種を作らせないための速攻性のある接客テクニックを紹介します。どれも「お客様に興味・関心を持つ」ことが必要となるものです。

 1.不明点の確認無しに内線電話を案内しない。
 「何かご不明な点はございませんか」の一言無しに、「何かご不明な点がございましたらフロント○番までご連絡ください」と案内しているスタッフが実に多くいます。

 2.ワンパターンの観光案内をしない。
 客層や天候を考慮した提案“も”できていますか。いつ聞いても同じ有名観光地だけを案内する、ワンパターンの対応を良く耳にします。

 3.客層を見ない館内・客室案内をしない。
 ただでさえ長くなりがちな館内・客室案内を、客層を見て説明の仕方に工夫しましょう。
 1人旅にもかかわらずキッズスペースを紹介したり、体の不自由な方にフィットネスコーナーの案内をしたりしていませんか。

 4.お客様を見て見ぬふりをしない。
 お客様を素通りしていませんか。お客様の存在に気が付いたら挨拶や会釈はしてほしいです。

 5.お客様を「お客様」と呼び続けない。
 お客様にはお名前で呼んでほしい方とそうでない方の両方がいます。どちらのお客様にも納得していただくために、客室や個室の中などの閉鎖的な空間では、名前をお呼びし、他のお客様もいるオープンスペースでは「お客様」と呼ぶという対応ができると良いでしょう。

 お客様の不満の種を少しでも作らせないためにも、お客様の前でついついやってしまっていないかを確認してみてください。

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『おもてなし接客術』㊳―「動画マニュアルで生産性向上を」

Posted on 2019-08-25

旬刊旅行新聞8月11日・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊳です。

「動画マニュアルで生産性向上を」

 

旅館の接客マニュアルを、動画で作成しようとする旅館が増えてきています。

 「百聞は一見に如かず」ということわざの通り、紙に書かれたものを読んで理解するより、実際の動きを見てもらった方が教える側は伝えやすいし、学ぶ側も理解しやすいのは、皆さんご承知の通りです。


 私が、紙ベースの接客マニュアルの作成と定期的な研修も担当している旅館が、動画マニュアルを作成しました。


 これが非常に良くできていて、これからのスタッフ教育だけでなく、旅館経営に大いに役立つ構成となっています。動画では、いわゆる“仲居さん”が担当する場面が、すべて収められています。


 動画マニュアルの特徴は、お客様の動きやスタッフの接客の“流れ”があるため、自然と実際の接客場面に近い状況(応用編)を作り出すことができ、紙ベースのマニュアルでは補いきれない部分も動画ではカバーできることです。


 この旅館の動画が優れているのは、接客の動きだけではなく、座学などで教育するような内容も動画にまとめていることです。


 旅館のホームページや地図を用いながら、旅館の歴史や立地、東京、大阪など大都市からの距離や時間、宿泊客が訪れる周辺の観光地についてセミナー形式で説明しています。


 ほかにも、本来なら歩き回って行う館内ツアーも、動画を駆使して案内しています。旅館の規模にもよりますが、本来なら1―2時間も掛かってしまう館内ツアーです。


 説明したいことは数十分で済むのに、館内の移動時間に多く時間が取られてしまうのが悩みの種でしょう。それが、動画で編集できるため、ムダな移動時間を省いて説明に集中する研修に仕上げることができます。


 旅館の社員は3年勤めれば上等と言われています。人によっては数カ月で退職してしまうかもわからない。そうした社員に掛ける研修は、なるべく時間を掛けずに効率良く行うことが求められます。


 この動画マニュアルの内容はすべて研修しようとすると、丸1―2日かかると思いますが、動画では2時間半で済みます。


 新人スタッフとは直接コミュニケーションを取るべきとか、コミュニケーションが希薄になるのではと懸念する方もいらっしゃるかもしれません。


 決まりきった説明は動画で十分です。そこで余った時間を個人面談など通して個々人の分からないことや不安な点、考えなどを聞き出す方が、よほど有益だと思います。


 「生産性向上」や「働き方改革」にも直結する動画マニュアルの導入を、ぜひ検討されてみてはいかがでしょう。


 なお、このような動画マニュアルは、紙ベースの接客マニュアル無しに一足飛びに作るのは不可能ということは付け加えておきます。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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